木組みが生む美 ― 斗栱(ときょう)に見る日本建築の職人技

日本の伝統建築を見上げたとき、屋根の下に重なり合う「マスのような木組み」に目を奪われたことはありませんか?
それが「斗栱(ときょう)」と呼ばれる、日本建築を象徴する構造のひとつです。
斗栱とは ― 屋根を支える“見せる構造”
斗栱(ときょう)は、柱の上に設けられた木の組み物。
「斗(ます)」という箱形の木材と、
それをつなぐ「肘木(ひじき)」とを交互に積み重ねて作られます。
この組み方によって、重たい屋根の荷重をうまく分散させ、
軒(のき)を長く張り出しても、構造的に安定する仕組みです。
単なる飾りではなく、力を受け止めるための構造でありながら、
その姿はまるで建築を彩る彫刻のよう。
機能と美が一体となった、日本の職人ならではの発想です。
構造美が宿るリズム ― 斗と肘木の調和
斗と肘木が交互に組まれた形は、
建物の正面に均一なリズムを生み出します。
光が差し込むと、マスの一つひとつに影が落ち、
立体的な陰影が浮かび上がる。
この陰影の重なりこそが、
日本建築が“静けさの中に力強さを感じる”理由のひとつです。
斗栱はただの木組みではなく、
構造そのものをデザインに変える技術。
見えない力を、見える美しさへと昇華させた建築美です。
建築様式ごとに異なる斗栱の表情
日本建築の時代や様式によって、斗栱の形も変化してきました。
どの様式にも共通しているのは、
“構造を隠さずに魅せる”という考え方。
この思想は、現代建築やリノベーションにも通じる
「構造美」の原点と言えるでしょう。
職人の目線 ― 見えない部分こそ美しく
斗栱を組む職人は、
木目や強度、反りをすべて見極めて材を選びます。
表に出ない部分まで、手を抜かない。
その積み重ねが、何百年も風雨に耐える建物をつくるのです。
建築において“見えない部分”を大切にする精神は、
私たちVirestoが目指す空間づくりにも通じています。
構造・素材・仕上げ——
どれか一つが欠けても、長く愛される建築にはならない。
現代へ受け継がれる「見せる構造」
現代建築でも、梁や構造材をあえて見せるデザインが増えています。
それは、木の力強さや温もりを感じるだけでなく、
建物の“正直な構造”をそのままデザインとして伝える手法です。
斗栱の思想は、今も息づいています。
構造と美を融合させ、
人が安心して集う空間を生み出す——
それが、古来から変わらない日本建築の精神です。
結び ― 職人の知恵が形になる場所
斗栱は、単なる「屋根の下の木組み」ではありません。
それは、重さを受け止める技術であり、
美しさを支える心でもあります。
何百年も前の職人たちが手を動かしながら生み出した知恵が、
今もお寺や神社の軒先で、静かに息づいている。
その姿に、Virestoが大切にしている“手仕事の価値”と“形の意味”が重なります。
「見えない部分こそ、美しく。」
斗栱は、それを教えてくれる建築の言葉です。

